「五十肩のリハビリは、いつから始めればいいの?」
「自宅でやっているストレッチが正しいか不安…」
「無理にやって悪化したらどうしよう」
こうした疑問や不安を抱えながら、五十肩のリハビリを続けている方は多くいらっしゃいます。
五十肩のリハビリは、「いつから始めるか」「どの動きをするか」「どこまでやっていいか」の判断が非常に重要です。ステージを無視したリハビリは、逆に症状を悪化させるリスクがあります。
この記事では、五十肩の3つのステージ(炎症期・拘縮期・回復期)に合わせたリハビリ方法を、医学論文をもとに解説します。自宅でできる具体的なストレッチ方法と、やってはいけないNG動作もあわせてご紹介します。
1. 五十肩のリハビリはいつから始めるべき?ステージ別の判断基準
五十肩のリハビリで最も重要なのは「タイミング」です。ステージによって、適切なアプローチがまったく異なります。
ステージ別のリハビリ方針
| ステージ | 状態の目安 | リハビリ方針 |
|---|---|---|
| 炎症期(急性期) | 安静時も痛い・夜間痛がある | 基本的に安静。無理な運動は避ける |
| 拘縮期(慢性期) | 痛みは和らいでいるが動きが制限される | 積極的に可動域訓練を開始 |
| 回復期 | 痛みが軽減し、動きが戻ってきている | 筋力強化・再発予防 |
炎症期にリハビリを始めてはいけない理由
炎症期は、関節包内に活発な炎症が起きている状態です。この時期に積極的な運動を行うと、炎症が悪化し、痛みが強くなる可能性があります。
炎症期のサインとして、以下が挙げられます。
- 安静にしていても肩が痛む(自発痛)
- 夜中に痛みで目が覚める(夜間痛)
- 肩に熱感・腫れを感じる
こうした症状がある間は、基本的に患部を安静に保つことが優先されます。
拘縮期に移行したサイン
以下の変化が現れてきたら、拘縮期に移行したと考えられます。
- 安静時の痛みが減ってきた
- 夜間痛が落ち着いてきた
- ただし、肩を動かすとまだ痛む・引っかかる感じがある
- 腕が上がらない・後ろに回せないなどの動作制限が顕著
この時期から、専門家の指導のもとでリハビリを開始するのが一般的です。
2. 炎症期(急性期):動かしてはいけない?温冷の使い分け
炎症期の基本は「安静」
炎症期の基本原則は、患部への過度な刺激を避けることです。ただし、「完全に動かさない」のではなく、「痛みを出さない範囲での最小限の動き」を保つことが重要です。
長期間まったく動かさないでいると、関節が癒着しやすくなるため、日常生活の中で自然に行う範囲の動きは継続することが大切です。
炎症期の冷温の使い分け
炎症期は冷やすが基本
熱感・腫れ・強い痛みがある急性期は、アイシングが有効とされています。
アイシングの方法:
- 氷嚢(アイスパック)をタオルで包んで患部に当てる
- 1回15〜20分程度・1日数回
- 直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため、必ずタオルを挟む
温める場合(注意が必要)
炎症が落ち着いてきた時期(拘縮期以降)は、温めることで血行が促進され、組織の柔軟性改善に寄与する可能性があります。ただし、熱感・腫れがある状態で温めると炎症が悪化する恐れがあるため、注意が必要です。
3. 拘縮期:自宅でできる可動域回復ストレッチ(3種・図解)

拘縮期は、関節包の癒着をほぐしながら可動域(関節を動かせる範囲)を回復させていく段階です。ここでは自宅でできる代表的なストレッチを3種ご紹介します。
重要: いずれも「痛みのない範囲」で行うことが大原則です。痛みを無視して無理に行うと、再炎症や症状悪化のリスクがあります。
ストレッチ1:コッドマン体操(振り子体操)
五十肩のリハビリとして最も基本的な運動のひとつです。重力を利用して肩関節への牽引(引っ張り)効果を得ます。
やり方:
- 健側(痛みのない方)の手でテーブルや椅子の背もたれを支える
- 上半身を少し前傾させ、患側(痛みのある方)の腕を自然に下げる
- 腕の重さを利用して、前後・左右・円を描くようにゆっくり振る
- 腕の力を抜いて、重力に任せて振ることがポイント
- 1回1〜2分・1日2〜3回
効果: 関節への過度な負荷をかけずに関節腔を広げ、癒着のほぐれを促す可能性があります。
ストレッチ2:タオル体操(背中でのタオル引き)
肩関節の内旋・外旋の可動域を改善するためのストレッチです。
やり方:
- 長めのタオルを用意する
- 健側の手で肩越しにタオルを後ろに垂らし、患側の手で下から持つ
- 健側の手でタオルをゆっくり上に引き上げ、患側の腕を背中で上げていく
- 痛みのない範囲でとどめ、5〜10秒キープ
- 5〜10回繰り返す
注意: 強引に引っ張ると痛みが出るため、あくまでゆっくり・じんわりと行うことが重要です。
ストレッチ3:壁登り体操(指の壁登り)
肩の前方挙上(腕を前から上げる動き)を段階的に改善するためのストレッチです。
やり方:
- 壁の前に立ち、患側の指を壁に当てる
- 指を少しずつ上に歩かせるように、壁を登らせていく
- 痛みが出たところで止め、5〜10秒キープ
- 翌日・翌々日と少しずつ高くすることを目指す
目安: 毎回目印をつけておくと、少しずつ改善していることが視覚的に確認でき、モチベーション維持につながります。
PNFアプローチの有効性(専門家との組み合わせ)
Khan AH ら(2025年)のランダム化比較試験(80例・6週間)では、PNF(固有受容性神経筋促通法)アプローチが拘縮性関節包炎患者の可動域回復に寄与する可能性が示されました(Khan AH et al., 2025, PMID: 40317031)。
PNFは専門家のサポートが必要な手技ですが、通常のストレッチと組み合わせることで、より効率的な可動域改善が期待できる可能性があります。
4. 回復期:筋力強化と再発予防のエクササイズ
痛みが和らぎ、可動域が戻ってきたら、回復期のエクササイズに移行します。この段階では、可動域の維持だけでなく、再発を防ぐための筋力強化が重要です。
なぜ筋力強化が必要か
五十肩の経過中、痛みを恐れて肩をあまり使わない期間が続くと、肩周囲の筋肉(特にローテーターカフ:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)が弱くなります。この筋力低下は再発リスクを高めるため、回復期に筋力を取り戻すことが重要です。
回復期のエクササイズ例
チューブ(ゴムバンド)を使った外旋トレーニング
- チューブを柱や扉に固定する(肘の高さ程度)
- 肘を90度に曲げ、脇を閉めた状態でチューブを持つ
- 腕を外側に回していく(外旋)
- ゆっくりと元に戻す
- 10〜15回・2〜3セット
注意: 軽い負荷から始め、痛みが出ない範囲で行うことが大切です。
再発予防のための日常習慣
- デスクワーク中は定期的に肩を動かす(1時間に1回程度)
- 猫背・巻き肩の姿勢改善に取り組む
- 重いものを持つ場合は、肩だけでなく体幹を使う意識を持つ
5. やってはいけないNG動作・悪化リスクの見分け方

専門家からの警告:NG動作でよくあるパターン
実際のケアの現場から、よくあるNG動作について専門家の見解をご紹介します。
やってはいけないNG動作についてですが、痛いのを我慢してケアをやりすぎてしまうと、再炎症を起こしたり悪化したりすることがあります。そのため、痛くない範囲で動かすということが非常に大切です。実際に、痛くても無理に動かしすぎてしまい、症状を悪化させてしまった方を何人も見てきました。
また、寝る体勢についても注意が必要です。(1)寝る姿勢の見直し:(a)横向きで寝る場合は特に肩を痛めやすいため、体勢を改善する (b)普段の姿勢自体を改善していく こうした点を見直していくのが良いですね。
— 山﨑 駿(国際基準カイロプラクター・鍼灸師)
具体的なNG動作リスト
1. 痛みを我慢してのストレッチ
「痛いのを我慢しながら動かすと早く治る」というのは誤りです。痛みは組織にダメージが加わっているサインです。特に炎症期は、無理な運動が炎症を悪化させ、回復を遅らせる可能性があります。
2. 患側を下にした横向き寝
痛みのある肩を下にした横向きで寝ると、体重が患側の肩にかかり続け、夜間痛の悪化や炎症増大につながる可能性があります。
就寝時の対策として、以下をお勧めします。
- 患側を上にした横向き寝(患側に枕やクッションをあてて安定させる)
- 仰向け寝が最も負担が少ない場合が多い
3. 炎症期の積極的な温め(湯船での長時間の温浴)
熱感・腫れがある炎症期に長時間入浴したり、患部を強く温めたりすると、血管が拡張して炎症が悪化する可能性があります。
4. 「がんばりすぎ」の毎日ストレッチ
リハビリは継続が大切ですが、無理な頻度・強度で毎日行うと組織が回復する暇がなく、かえって悪化することがあります。週3〜5回程度、適切な強度で行うことが大切です。
悪化サイン(すぐに専門家へ)
以下の症状が現れたら、無理にリハビリを続けず専門家に相談してください。
- リハビリ後に痛みが著しく強くなる
- 数日後も痛みが引かない
- 腕にしびれが出てきた
- 発熱・赤みなど感染症を疑う症状がある
6. 手技ケアとの併用で回復が早まる可能性がある理由

自宅リハビリだけでは難しいこと
自宅でのセルフリハビリは非常に重要ですが、以下のような点は専門家のサポートなしには難しいことがあります。
- 肩関節の複数の関節(胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節)を個別にアプローチすること
- 関節の動きを評価しながらリハビリの強度・方向を調整すること
- 再炎症のリスクを見極めながらケアを進めること
専門的な手技ケアの役割
炎症期は安静が必要ですが、拘縮期になりますと、積極的に動かしていくことで肩関節の筋肉のこわばりや、関節が固まってしまうのを防ぎます。痛みのない範囲で関節を動かすことが大切です。肩関節には、胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節など、たくさんの関節があります。これら一つひとつに対して、丁寧に専門的な関節運動を行っていくことが求められます。
— 山﨑 駿(国際基準カイロプラクター・鍼灸師)
整体・手技ケアで期待できること
専門家による手技ケアでは、以下のようなアプローチが行われます。
| アプローチ | 目的 |
|---|---|
| 関節モビリゼーション | 関節包の癒着をほぐし、可動域を段階的に改善 |
| 筋膜(筋肉を包む薄い膜)・筋肉へのアプローチ | 肩周囲の筋緊張を緩和し、関節の動きをサポート |
| 鍼灸 | 炎症期で動かせない時期でも、痛みなくアプローチできる |
| 姿勢指導 | 猫背・巻き肩の改善で再発リスクを低減 |
自宅ケアと専門家ケアの「分業」
最も効果的なのは、自宅でのセルフリハビリと専門家によるケアを組み合わせることです。
- 自宅: 毎日の軽いストレッチ・コッドマン体操・生活習慣の改善
- 専門家: 週1〜2回の関節モビリゼーション・鍼灸・姿勢調整
この組み合わせにより、回復が加速する可能性があります。
まとめ
五十肩のリハビリで最も重要なのは、「ステージに合った適切なアプローチを、適切なタイミングで行うこと」です。
- 炎症期: 安静が基本。無理な運動は厳禁
- 拘縮期: 痛みのない範囲でのストレッチ(コッドマン体操・タオル体操・壁登り)を開始
- 回復期: 筋力強化と再発予防エクササイズ
- NG動作: 痛みを我慢しての無理なストレッチ・患側を下にした横向き寝・炎症期の温め
- 専門家との組み合わせ: 関節への個別アプローチや評価は、専門家のサポートが有効
自宅でのリハビリと専門家によるケアを上手に組み合わせながら、焦らず着実に回復を目指してください。
免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医学的な診断・治療を推奨するものではありません。症状が気になる場合は、医療機関にご相談ください。