五十肩で痛みが続くとき、多くの方が頼るのがロキソニン(ロキソプロフェン)などの市販・処方の鎮痛薬です。
「飲んでいる間は楽になるけど、薬をやめるとまた痛くなる」
「毎日飲み続けていいのか不安…」
「整形外科でも処方されたけど、何か月も飲んでいていいの?」
こうした疑問を抱える方は多くいらっしゃいます。
この記事では、五十肩に対するロキソニン(NSAIDs)の効果・限界・副作用を医学論文をもとに解説するとともに、薬に頼りすぎない並行ケアの考え方についてもご紹介します。
1. 五十肩にロキソニンが処方される理由とNSAIDsのしくみ

ロキソニン(NSAIDs)とは
ロキソニンは「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれる薬のひとつです。ロキソプロフェンを主成分とし、炎症を抑えて痛みを和らげる効果が期待されます。日本では整形外科・内科・一般薬局など幅広い場面で使用されています。
NSAIDsには多くの種類があります。
| 一般名 | 代表的な商品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| ロキソプロフェン | ロキソニン | 胃への影響が比較的少ない(プロドラッグ型) |
| ジクロフェナク | ボルタレン | 強力だが胃腸への負担大 |
| セレコキシブ | セレコックス | COX-2選択的阻害・胃腸への影響少ない |
| ナプロキセン | ナイキサン | 効果持続時間が長め |
五十肩にNSAIDsが使われる理由
五十肩(肩関節周囲炎)の炎症期には、関節包内でプロスタグランジンという炎症性物質が産生されます。NSAIDsはCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を阻害してプロスタグランジンの産生を抑えることで、炎症と痛みを軽減します。
五十肩でNSAIDsが処方・使用される主な目的は以下の2点です。
- 痛みのコントロール: 特に急性炎症期の強い痛みを和らげ、日常生活を送りやすくする
- リハビリのサポート: 痛みが和らいだ状態でリハビリ・ストレッチを行いやすくする
2. ロキソニンの効果:医学論文が示す有効率と限界
NSAIDsとステロイドを比較した研究
Petchprapa CN ら(2014年)による系統的レビュー・メタ分析では、五十肩に対するNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とステロイドの効果を比較した複数の研究が分析されました。その結果、NSAIDsはプラセボ(偽薬)と比較して有意に痛みを軽減する効果が示されましたが、ステロイドと比較すると寛解率が低い傾向が示されました(RR: 0.64)(Petchprapa CN et al., 2014, PMID: 24841629)。
この結果が示すことは以下の2点です。
- ロキソニンは「まったく効かない」わけではない: プラセボより有意に有効であることが示されています
- ただし、ステロイドより強力ではない: 症状が重い場合はステロイド注射の方が効果が高い可能性があります
NSAIDsの限界
ロキソニンなどのNSAIDsは、あくまで「炎症と痛みを一時的に抑える」薬です。重要な限界点として以下が挙げられます。
- 根本的な拘縮(関節の癒着・硬化)を改善しない: 薬で痛みを抑えても、関節包の癒着が解消されるわけではありません
- 継続使用による慣れ: 長期使用で効果が減弱するケースがあります
- ステージによって有効性が異なる: 炎症が落ち着いた拘縮期では、痛みの原因が炎症から「関節の可動域制限」に変化するため、NSAIDsだけでは対応が難しくなります
3. ロキソニンテープ(湿布)vs 内服薬:使い分けのポイント

ロキソニンには内服薬(飲み薬)と外用薬(テープ・湿布)があります。それぞれの特徴を理解して使い分けることが大切です。
ロキソニンテープ(外用薬・湿布)の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作用の仕方 | 皮膚から薬が浸透し、局所的に作用 |
| 胃腸への負担 | 内服薬より少ない |
| 深部への浸透 | 浅い部位には届くが、深部の関節包まで届きにくい |
| 使いやすさ | 貼るだけで簡単 |
| 使用目安 | 1日1〜2回貼り替え |
ロキソニン内服薬の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作用の仕方 | 全身に循環して作用 |
| 胃腸への負担 | 外用薬より高い(胃薬との併用が推奨されることが多い) |
| 効果の範囲 | 深部の炎症にも届きやすい |
| 注意点 | 空腹時の服用は避ける |
どちらを選ぶか
一般的な使い分けの目安です(個人の状態や医師の判断が優先されます)。
- 炎症が比較的軽度・局所的: ロキソニンテープ(外用)から試すケースが多い
- 炎症が強い・広範囲: 内服薬の方が全身性の抗炎症効果を期待できる場合がある
- 胃腸が弱い: テープ(外用)の方が胃腸への負担が少ない
4. ロキソニンが効かない・効きにくいケースとその理由
拘縮期以降は「炎症の薬」では限界がある
五十肩のステージが拘縮期に移行すると、痛みの主な原因が「炎症」から「関節包の癒着・硬化による動きの制限」に変化します。この段階では、炎症を抑えることを目的としたNSAIDsの効果が得られにくくなります。
「薬を飲んでも痛みが変わらない」「湿布を貼っても効いている感じがしない」という場合、拘縮期に入っているサインかもしれません。
ステロイド注射との比較
Kim SJ ら(2023年)によるメタ分析(4つのRCT・274例)では、高用量と低用量のステロイド注射を比較した結果、両者の効果に有意な差は認められなかったと報告されています(Kim SJ et al., 2023, PMID: 37774178)。ステロイド注射は強力な抗炎症効果を持ちますが、使用回数・頻度には制限があるため、長期的には他のアプローチとの組み合わせが必要になります。
整体ケアとの組み合わせで変化した実例
薬だけでなく整体ケアを組み合わせることで、薬の量が変化したケースをご紹介します。
痛みがあるときには、湿布やロキソニンなどを使用していましたが、整体ケアを組み合わせて実施することにより、湿布の量が減り、飲み薬の痛み止めの量も減ってきたということがありました。痛みを感じていない状態では関節運動がしやすくなりますので、最初の頃は来院前に飲んできてもらっていましたが、痛みが収まってくる期間が増えることによって、徐々に薬を減らす形でのケアができるようになりました。
— 山﨑 駿(国際基準カイロプラクター・鍼灸師)
この事例が示すように、薬と手技ケアを組み合わせることで、痛みのコントロールがしやすくなり、結果的に薬の使用量が変化するケースがあります。
5. 飲み続けることのリスク・副作用(胃腸・腎機能)
ロキソニンなどのNSAIDsは、適切に使えば有効な薬ですが、長期使用には注意が必要な副作用があります。
胃腸への影響
NSAIDsは、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの産生も抑制してしまいます。そのため、長期使用・高用量使用では胃腸障害(胃炎・胃潰瘍・消化管出血)のリスクが高まります。
対策として、NSAIDsと一緒に胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)が処方されることが多いです。
腎機能への影響
NSAIDsを長期・大量に使用すると、腎臓の血流が低下し、腎機能に影響を与える可能性があります。特に高齢者・腎臓病をお持ちの方は注意が必要です。
心臓・血管への影響
一部のNSAIDs(特にCOX-2選択的阻害薬)では、心臓・血管系のリスクが高まる可能性が指摘されています。高血圧・心臓病をお持ちの方は医師に相談することが重要です。
長期使用の目安
一般的に、NSAIDsの長期連用(数か月以上)は医師の管理のもとで行うことが推奨されています。「自分で薬局で買って何か月も飲み続けている」という状況は避け、定期的に医療機関で状態を確認することをお勧めします。
6. 薬と並行して行える痛み緩和のセルフケア

ロキソニンで痛みをコントロールしながら、薬以外のアプローチを並行して行うことが、五十肩の改善につながる可能性があります。
鍼灸×骨格アプローチの実際
肩関節が痛みにより動かすことも困難である方に関しては、鍼灸といった肩関節を動かさないで施術できる方法を提案することが多いです。肩関節を動かさないため、痛みを伴わずに施術をすることができ、大変効果的であります。
関節や腕を動かすことが困難でない場合には、骨格へのアプローチを行うことによって、(1)関節可動域の拡大 (2)筋緊張の緩和 これらを図り、日常生活で動かせる範囲をどんどん増やして、良い方向に持っていくということですね。
— 山﨑 駿(国際基準カイロプラクター・鍼灸師)
薬と並行して取り入れられるセルフケア
炎症期
- 患部のアイシング(1回15〜20分・1日数回)
- 患側を下にしない横向き寝の見直し
- 無理な動きを避けながら、日常生活の中で最小限の動きを保つ
拘縮期
- コッドマン体操(振り子体操):重力を使った関節牽引
- タオル体操・壁登り体操(痛みのない範囲で)
- 入浴でのリラックス(炎症が落ち着いた時期)
薬を「補助ツール」として位置づける考え方
ロキソニンは、あくまで「痛みをコントロールして動きやすくするための補助ツール」として位置づけるのが適切です。
- 薬で痛みを和らげる → 動きやすい状態を作る → リハビリ・ストレッチ・手技ケアを行う
この流れを意識することで、薬の使用量を徐々に減らしながら、根本的な改善に向けたアプローチが取りやすくなる可能性があります。
薬をやめるタイミング
「いつまで飲んでいいか」は医師と相談して決めることが重要です。一般的に、以下のような状態になったら減薬を医師と相談する目安とされます。
- 安静時の痛みがほとんどなくなった
- 夜間痛が解消された
- 日常生活の動作がある程度できるようになった
よくある質問(Q&A)
Q. ロキソニンとロキソニンSの違いは?
A. 「ロキソニンS」は薬局で購入できる市販薬、「ロキソニン」は医師が処方する処方薬です。成分(ロキソプロフェン)は同じですが、処方薬の方が適応症状の範囲が広く、保険適用となります。市販薬の自己判断での長期使用は避け、症状が続く場合は医療機関へ相談することをお勧めします。
Q. 湿布と飲み薬は同時に使っていい?
A. 同じ成分(例:ロキソプロフェン)の内服薬と外用薬を同時に使うと、NSAIDsの摂取量が増え、副作用リスクが高まる可能性があります。併用する場合は必ず医師・薬剤師に確認してください。
Q. 市販の湿布(ロキソニンテープなど)は何枚まで?
A. 一般的に、外用NSAIDsは1日1〜2回貼り替えが目安です。過度に複数枚を同時に貼ることは推奨されません。使用方法は製品の添付文書に従い、症状が改善しない場合は医療機関へ相談してください。
まとめ
五十肩に対するロキソニン(NSAIDs)の役割と限界をまとめます。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 効果 | プラセボより有意な鎮痛効果あり(PMID: 24841629)。ただしステロイドより寛解率は低い(RR: 0.64) |
| 限界 | 根本的な拘縮(癒着)は改善しない。拘縮期以降は効果が得にくい |
| テープ vs 内服 | 軽度には外用、強い炎症には内服。胃腸が弱い方は外用を優先 |
| 副作用 | 長期使用で胃腸障害・腎機能低下のリスク。医師の管理下で使用を |
| 組み合わせ | リハビリ・手技ケアとの併用で、薬の使用量が変化するケースもある |
ロキソニンは五十肩の痛みに対して有用な選択肢ですが、薬だけに頼るのではなく、リハビリや専門家によるケアと組み合わせることが、より良い回復につながる可能性があります。
免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医学的な診断・治療を推奨するものではありません。薬の使用に関しては、必ず医師・薬剤師にご相談ください。