監修者コメント
しびれや耳鳴りが気になって、ビタミンB12を毎日続けている方を臨床でもよくお見かけします。B12は水溶性で、健康な方なら摂りすぎを過度に心配しすぎなくてよいケースがほとんどです。一方で、腎臓の働きが気になる方や持病のある方は、量について一度かかりつけにご相談いただくと安心だと感じています。サプリは「足りない分を補う」くらいの気持ちで、ふだんの食事と上手に組み合わせていけるといいですね。
— 山﨑 駿
専門家監修・エビデンスに基づく情報
本記事はJAMA掲載の無作為化比較試験(PMID: 20424250)および厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに、国家資格4種・D.C.・登録販売者を保有する監修者が内容を確認しています。
目次
【結論】健康な人は基本問題なし/注意が必要なのは”ある条件”の人
この記事の結論(先に確認)
- 健康な成人は、B12を多めに摂っても重大な健康被害のリスクは極めて低い
- 厚労省は耐容上限量を「設定なし」と公式に定めている(2020年版)
- 注意が必要なのは腎機能が低下している方と添加物アレルギーがある方
- 目安量を守って継続することが、安心して使い続けられる最も合理的な選択
結論からお伝えします。健康な成人であれば、ビタミンB12を多めに摂取しても重大な健康被害が起きる可能性は極めて低いとされています。
その理由は主に2つです。第一に、ビタミンB12は水溶性ビタミンであり、体内に余剰分が生じた場合は尿として排出される性質を持っています。第二に、腸からの吸収量に上限(飽和)があるため、一度に大量を口にしても、すべてが体内に取り込まれるわけではありません。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においても、ビタミンB12は耐容上限量が「設定なし」となっています(推奨量は18歳以上の男女ともに2.4µg/日)。科学的根拠が十分でないため上限値が定められていない、というのが現時点の公式見解です。
ただし、以下に該当する方は別途注意が必要です。
この2つのケースについては、後の章で詳しく解説します。まずは「なぜ基本的に安全なのか」から見ていきましょう。
なお、ビタミンB12の効果・働きについては、ビタミンB12の効果と不足するとどうなる?【専門家解説】でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
なぜ摂りすぎても基本は大丈夫?水溶性ビタミンの仕組み
水溶性ビタミンは「貯め込みにくい」性質がある
ビタミンには、脂溶性(A・D・E・K)と水溶性(B群・C)の2種類があります。脂溶性ビタミンは脂肪組織や肝臓に蓄積しやすく、過剰摂取が問題になるケースがあります。一方、水溶性ビタミンは水に溶ける性質のため、体内で過剰になった分は腎臓でろ過されて尿として排出される仕組みです。
ビタミンB12も水溶性ビタミンのひとつ。体内での貯蔵量には限りがあり(主に肝臓に数年分が蓄えられるともいわれています)、余剰分は自然と体外に出ていきます。
腸からの吸収量には「飽和」がある
ビタミンB12が小腸で吸収されるときには、胃粘膜から分泌される内因子(ないいんし)というタンパク質が必要です。この内因子とB12が結合することで初めて吸収が行われますが、内因子の量には限りがあるため、一度に大量のB12を摂取しても、吸収できる量には自然と上限がかかります。
たとえば、通常の食事では2〜3µgのB12を摂取できますが、サプリメントや薬で1,000µg(1mg)を一度に摂ったとしても、吸収される量は数µg程度にとどまるとされています。残りはそのまま便として排出されるか、腸からの受動拡散でごく少量が吸収される程度です。
厚生労働省は耐容上限量を「設定なし」としている
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンB12について過剰摂取による健康障害を示す根拠が十分でないとして、耐容上限量を設定していません。これは「いくら摂っても問題ない」という意味ではなく、「現時点では安全性を脅かす上限量を科学的に定めることが難しい」という意味合いです。
成人の1日あたりの推奨量は2.4µg。これは食事だけでも十分に満たせる量です。
それでも注意したいケース
①腎機能が低下している方(CKDなど)
「基本的に安全」とお伝えしましたが、すでに腎機能が低下している方にとっては話が変わります。
通常、過剰なビタミンB12は腎臓でろ過されて尿に排出されます。しかし腎機能が低下しているとこのろ過が十分に行われず、血中にB12が蓄積しやすくなります。さらに深刻なのは、高用量B12の長期摂取が腎機能低下を加速させる可能性が示唆されている点です。
JAMA掲載・無作為化比較試験(2010年)
2010年にJAMA(アメリカ医師会雑誌)に掲載されたDIVINe試験(House AA et al.)では、糖尿病性腎症の患者を対象に、高用量のビタミンB群(葉酸2.5mg・ビタミンB6 25mg・ビタミンB12 1mg/日)を投与したグループは、プラセボ群と比較して腎機能(GFR・糸球体ろ過量)の低下が有意に加速し、血管イベントも増加したと報告されています(PMID: 20424250)。
この試験では、通常のサプリメントをはるかに超える高用量が使われていた点には注意が必要ですが、「腎機能が落ちているときに高用量B群を摂り続けることには慎重であるべき」という示唆として受け止めることが大切です。
慢性腎臓病(CKD)の方、透析を受けている方、腎臓の数値に異常を指摘されたことがある方は、ビタミンB12の高用量サプリメントを始める前に、必ず主治医・薬剤師にご相談ください。
②製品の添加物やメコバラミンへの過敏・アレルギーがある方
ビタミンB12そのものによる過剰症は報告が少ないですが、医薬品としてのビタミンB12であるメコバラミンの添付文書(PMDAに届出)では、以下の副作用が報告されています(頻度はいずれも低い)。
- 発疹(0.1%未満)
- 蕁麻疹(じんましん)・かゆみ(頻度不明)
- 食欲不振・吐き気・下痢(0.1%未満)
これらはビタミンB12そのものへの反応である場合もありますが、製品に含まれる添加物(コーティング剤・結合剤・着色料など)へのアレルギー反応である可能性も否定できません。サプリメントを摂り始めて皮膚症状や消化器症状が出た場合は、いったん摂取を中止して様子を見るのが安全です。
また、同じB12でも「シアノコバラミン型」と「メコバラミン型(活性型)」があります。特定の型が合わないことが報告されています。症状が続く場合は製品を変えてみることも選択肢のひとつです。ただし自己判断での継続・変更が不安な場合は医療機関にご相談ください。
しびれ・耳鳴りでB12を飲んでいる方へ
「たくさん飲めば早く治る」は誤解
手足のしびれや耳鳴り・神経痛でビタミンB12を飲んでいる方の中には、「なかなか効果を感じない…もっと量を増やせば早くよくなるかも?」と思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
しかし、これは残念ながら誤解です。
ビタミンB12(メコバラミン)は神経細胞の核酸・タンパク質合成を促進し、傷ついた末梢神経を修復する働きがあるとされています。末梢性神経障害(手足のしびれ・痛み)や内耳神経のサポートとして、耳鼻咽喉科や内科で処方されることもあります。
ただし、神経の修復は数週間〜数ヶ月単位の長期的なプロセスです。B12の摂取量を増やしたからといって、修復のスピードが比例して速くなるわけではありません。前述のとおり吸収量には上限があるため、過剰に摂っても体に取り込まれる量は変わらず、余剰分は排出されるだけです。
目安量を守ることが、実は最も安全で確実な近道
安心して続けるためのポイント
医薬品メコバラミンの標準的な投与量は1回500µgを1日3回(計1,500µg/日)が一般的な目安。市販サプリは製品表示の量を守って継続することが、最も安全で合理的な選択です。神経修復は長期プロセス。焦って増やさず、正しい量を続けることが近道になります。
「しびれがなかなか改善しない」「耳鳴りが続いている」という場合は、量を増やすよりも原因を改めて見直すことが重要です。しびれや耳鳴りの原因は多様で、ビタミンB12の不足だけが原因でないケースも多くあります。
ビタミンB群と疲労・神経の関係については、ビタミンB群が疲れやすさに関わる理由【専門家解説】もあわせてご覧ください。
1日の目安量と賢い摂り方
食事からの推奨摂取量(厚労省基準)
| 対象 | 推奨量(µg/日) |
|---|---|
| 成人男性(18歳以上) | 2.4 |
| 成人女性(18歳以上) | 2.4 |
| 妊婦 | 2.8 |
| 授乳婦 | 3.2 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日常的な食品では、アサリ・シジミ(約60µg/100g)・牛レバー(約53µg/100g)・サンマ(約17µg/100g)などに豊富に含まれています。偏食がなければ、通常の日本食で推奨量は概ね満たせます。
サプリメントと医薬品(メコバラミン)の位置づけの違い
市場にはビタミンB12のサプリメントと、医薬品(処方薬・市販薬)の両方があります。この2つは目的も用量も異なります。
| サプリメント | 医薬品(メコバラミン等) | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 食事からの不足を補う栄養補助 | 末梢性神経障害に用いられる医薬品 |
| 1日の配合量の目安 | 製品により数十〜数百µg程度 | 通常1,500µg(500µg×3回) |
| 入手方法 | ドラッグストア・EC等で購入可 | 処方(または市販薬として購入) |
| リスク | 比較的低い(添加物注意) | 腎機能低下者は医師に相談 |
「B12サプリを飲んでいるけど足りているか不安」という場合は、まず食事内容を見直すことが先決です。サプリは食事の代わりにはなりません。
【受診・相談すべきサイン】こんな時は自己判断しないで
以下に当てはまる場合は、ビタミンB12の量を自己判断で増やしたり、市販品で様子を見たりせず、医療機関または薬剤師にご相談ください。
- 腎臓の治療中・透析中の方:高用量B群の摂取は主治医に事前確認を
- 腎機能の数値(クレアチニン・eGFR等)に異常を指摘されたことがある方:自己判断で高用量サプリを始めない
- サプリや薬を飲み始めて、皮膚に発疹・蕁麻疹・かゆみが出た方:服用をいったん中止して皮膚科・内科へ
- しびれや耳鳴りが改善せず、むしろ悪化している方:ビタミンB12だけが原因でない可能性があり、改めて原因を精査することが重要
- 原因不明の不調(疲労・息切れ・頭痛・神経症状など)が続く方:血中B12値の測定を含め、血液検査で状態を確認する
- 妊娠中・授乳中の方:サプリメントの種類・量は産婦人科に確認する
ビタミンB12は「水溶性だから安全」という側面があるとはいえ、どんな栄養素も体の状態によって影響は変わります。不安がある場合は専門家に相談することが、最も確実で安心できる方法です。
この記事のポイント
おひげ先生からのポイント整理
国家資格4種・D.C.・登録販売者 監修
- 健康な成人であれば、ビタミンB12の過剰摂取による重大な健康被害のリスクは極めて低い(厚労省:耐容上限量「設定なし」)
- 水溶性ビタミンであり余剰分は尿へ排出される。腸内での吸収にも飽和があるため、大量に摂っても取り込める量に上限がある
- 腎機能が低下している方(CKD等)が高用量B群を摂取すると、腎機能低下を加速させる懸念が報告されている(PMID: 20424250)
- メコバラミン(医薬品B12)では発疹・蕁麻疹・消化器症状の副作用が低頻度で報告されている(PMDA添付文書より)
- しびれや耳鳴りに対してB12を飲む場合、量を増やしても吸収上限があるため効果が比例して高まるわけではない。目安量を守って継続することが基本
- 腎臓治療中・皮膚症状が出た場合・症状が悪化している場合は、自己判断せず医療機関へ
よくある質問(FAQ)
Q1. ビタミンB12は毎日飲み続けても大丈夫ですか?
健康な成人であれば、通常量のB12サプリを毎日飲み続けることによる健康被害のリスクは低いと考えられています。ただし、腎機能に問題がある方は主治医に確認してから始めることをおすすめします。
Q2. ビタミンB12のサプリを飲んで尿が黄色くなりました。大丈夫ですか?
ビタミンB群(特にB2・リボフラビン)の摂取によって尿が黄色くなることはよくあります。これは過剰分が排出されているサインであり、基本的には問題ありません。ただし、尿の色が濃い茶色・赤みがかっている場合は腎臓や肝臓の問題の可能性もあるため、医療機関を受診してください。
Q3. メチコバール(メコバラミン)とサプリのB12は何が違いますか?
メチコバール(一般名:メコバラミン)は医薬品であり、末梢性神経障害の治療補助を目的に処方・販売されます。一方、サプリメントは食品に分類され、栄養補助が目的です。医薬品は臨床試験で有効性・安全性が評価されていますが、サプリメントはその基準が異なります。神経症状の改善を期待するなら、まず医療機関での診断を受けることが先決です。
Q4. ビタミンB12が高値(血液検査)でしたが、サプリが原因ですか?
サプリや医薬品の摂取によって血中B12値が上昇することはあります。ただし、サプリを摂っていないのにB12が異常高値を示す場合は、腎機能低下・肝疾患・血液疾患の可能性も考えられるため、原因を精査するために医療機関への受診を検討してください。
Q5. しびれや耳鳴りにはビタミンB12以外にも何か必要ですか?
しびれや耳鳴りの原因は多様です。ビタミンB12不足による末梢神経障害が原因のこともありますが、頸椎の問題・血行不良・糖尿病・聴覚系の疾患などさまざまな要因が関与していることもあります。B12の補充だけで解決しない場合は、原因を特定するために医療機関での診察を受けることが大切です。
参考文献・出典
- House AA, et al. “Effect of B-vitamin therapy on progression of diabetic nephropathy: a randomized controlled trial.” JAMA. 2010;303(16):1603-9. PMID: 20424250. DOI: https://doi.org/10.1001/jama.2010.490
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「メチコバール錠 添付文書情報」https://www.pmda.go.jp/
この記事の内容は、監修者の専門的知識と公表されている学術・行政資料に基づいています。記載の効果・リスクには個人差があります。症状が気になる場合や持病のある方は、必ず医療機関にご相談ください。